現代にも目撃される幽霊の狩猟隊:ワイルドハントとクン・アンヌンの妖犬!!

現代にも目撃される幽霊の狩猟隊:ワイルドハントとクン・アンヌンの妖犬!! 話題

死者と妖精の軍勢が駆け巡る異界の狩り場

夜空を駆ける幽霊の軍勢、不吉な遠吠えを響かせる白い猟犬──。
ヨーロッパ各地に伝わるワイルドハント(Wild Hunt)の伝承は、古代から現代まで受け継がれ、今なお目撃証言が絶えない神秘的な現象です。

本記事では、特にウェールズ神話に登場する「クン・アンヌン(Cŵn Annwn)」と呼ばれる異界の猟犬に焦点を当て、彼らがどこに現れるのか、その出現場所と伝承について詳しく解説します。

 

ワイルドハントとは何か?

ワイルドハント(The Wild Hunt)は、北欧、西欧、中央ヨーロッパの神話に共通する伝承で、幽霊の狩人と猟犬からなる軍勢が夜空を駆け巡り、時には生者を、時には死者の魂を追って冥界へ連れ去るという恐ろしい現象です。

この狩りの指導者は地域によって異なり、北欧神話のオーディン(Odin)、アングロサクソンのウォーデン(Woden)、ケルト神話ガリアのケルヌンノス(Cernunnos)、そしてウェールズ神話のアラウン(Arawn)やグウィン・アプ・ヌッド(Gwyn ap Nudd)など、様々な神々や伝説的英雄が名を連ねています。

ワイルドハントの構成員も地域によって多様です。
普通の猟犬から超自然的な猟犬、さらには犬の姿をした妖精まで含まれ、彼らは妖精、悪魔、死者の魂とともに狩りを行います。

 

クン・アンヌン:異界の白い猟犬

クン・アンヌン(Cŵn Annwn、「母親の猟犬」を意味するクン・ママウ[Cŵn Mamau]とも呼ばれる)は、ウェールズ神話(Welsh mythology / ウェールズ語:Cymraeg mythology)における異界「アンヌン(Annwn)」の支配者アラウンに仕える幽霊のような猟犬です。

その最大の特徴は、白い体色と赤い耳という不気味な外見にあります。
ケルト文化において、赤は死を、白は超自然を象徴する色であり、この配色自体が彼らの異界性を物語っています。

彼らの姿は、中世ウェールズの物語集『マビノギオン(Mabinogion)/ ウェールズ語: Mabinogi』の第一系統に詳しく描かれています。
この物語は現存する最古のイギリス散文文学とされ、クン・アンヌンは森で牡鹿を狩る姿で登場し、主人アラウンとウェールズの王子プイス(Pwyll Pendefig Dyfed)の運命的な出会いを演出します。

また第四系統では、名前こそ明記されていませんが、もう一人の異界の領主グウィン・アプ・ヌッド(「ヌッドの息子、グウィン」)の猟犬としても言及されています。

興味深いことに、クン・アンヌンはウェールズ神話の「夜の魔女」マルティノス(Mallt-y-Nos、「夜のマチルダ」)とともに狩りをし、アーサー王の従兄弟キルフ(Culhwch)の物語にも登場します。
キルフは二匹の「異世界」の犬を連れてアーサー王の宮廷を訪れたとされ、これらもクン・アンヌンと考えられています。

 

クン・アンヌンの出現場所:境界を超える猟犬たち

クン・アンヌンは、人間界と異界の境界が曖昧になる特定の場所に現れるとされています。
以下、その主な出現場所を詳しく見ていきましょう。

 

ウェールズの聖なる山々

カダイル・イドリス山(Cadair Idris ‘Idris’s Chair’

最も有名な出没地の一つです。
この山で猟犬たちの遠吠えを聞くことは死の予兆とされています。

不思議なことに、遠吠えは遠くで聞こえるほど実際には近くにおり、逆に近くで聞こえる時は遠くにいると言い伝えられています。
この逆転現象は、異界と人間界の距離感の歪みを示唆しているのかもしれません。

バルウィン山脈(Berwyn Mountains / Y Berwyn, Mynydd y Berwyn

アンヌンへの物理的な入り口があるとされる場所です。
迷い込んだ旅人が猟犬の群れに遭遇したという伝説が数多く残されています。
この山脈は人間界と異界を繋ぐゲートウェイとして機能しており、境界が最も薄い場所の一つと考えられています。

  • 異界の王の宮殿: バーウィン山脈のピスティル・ライアド(Pistyll Rhaeadr)の滝の上方は、アヌーンの王グウィン・アップ・ニーズ(Gwyn ap Nudd)が統治する精霊や死者の国の入り口とされています。
  • 伝説: 霧の深い日に山中で光り輝く豪華な宮殿が現れ、旅人が宴に誘われるという伝承があり、一日過ごしたが数年後に帰還した人々がいます。
    しかし、そこで出された飲食物を口にすると、元の世界に戻れなくなると言われています。
  • 南斜面の滝を登り、尾根に沿って東へ可能な限り進むと、バード・アーサー(アーサーの食卓, Arthur’s Table)と呼ばれる場所に辿り着きます。
    注意点:「Bwrdd Arthur」という名前の場所はウェールズ内に複数存在します。

プリンリモン(Plinlimmon, Plynlymmon, Plinlimmon / Plynlimon, Pumlumon “five tops” or “five beacons”

  • ミッド・ウェールズのカンブリア山脈(the Cambrian Mountains)の最高峰である。
    ワイ(Wye)川、セヴァーン(Severn)川、レイドル(Rheidol)川の源流で神話的な重要性が高く、プリンリモンを含むカンブリア山脈一帯は、古くから霊的な場所とみなされている。
  • 北ウェールズのカダイル・イドリスの真南に位置し、同様の「夜空を駆ける猟犬」や「亡霊の狩猟団」の目撃や噂が、荒涼とした地形ゆえに語り継がれています。
  • 冬の嵐と音: 伝説では、冬の夜に聞こえる渡り鳥(ガンなど)の鳴き声や激しい風の音が、空を駆ける猟犬の遠吠えや狩りの音と結びつけられてきました。

ラドナーの森(Radnor Forest / Fforest Clud 

ラドナー山脈、ラドナーの森でワイルドハントが「目撃された」という話は公式に確認されていませんが、この地域の豊かな狩猟の歴史やケルト神話に基づいた民間伝承の一部と考えられます。
その神秘的な雰囲気から超常現象的な噂が絶えない場所の一つです。

  • ‘forest’ は中世の言葉で「鹿の狩猟場」を意味していました。
  • 最も有名な伝説によると、「ウェールズ最後のドラゴン」がこの地域に眠っていたため、地元の人々はラドナーの森を取り囲むように4つの教会を建て、竜に打ち勝った聖ミカエル(St Michael / ウェールズ語: Mihangel)に捧げられていました。

 

アンヌンへの門

フィノネの滝(Ffynone Waterfall

ペンブルックシャーにあるこの滝はアンヌンへの入り口とされ、マビノギオンの物語でアラウン王と人間界の君主プイスが運命的に出会った場所に近いとされています。
滝の水音は異界からの呼び声を運ぶともいわれ、多くの伝説が残されています。

丘・湖と霧も重要な出現場所です。
伝説によれば、湖の底や深い霧の中から突然現れ、罪人を追いつめて異界へと連れ去ると信じられてきました。
水と霧は、見通しを奪い境界を曖昧にする要素として、異界との接点を形成します。

 

霊的エネルギーの集まる場所

クン・アンヌンは、以下のような霊的な場所にも出現します。

  • 十字路: 複数の道が交差する場所は、異なる世界が交わる象徴的な空間です。
  • 古墳: 古代の埋葬地は死者の領域との接点として機能します。
  • 処刑場: 暴力的な死が繰り返された場所には、強い霊的エネルギーが残るとされています。

 

ワイルドハントの通り道

クン・アンヌンは、ワイルドハントの先導役として夜空や空中を駆ける姿が目撃されます。
老婆の叫び声と泣き声とともに悲しみに暮れる迷える魂をアンヌンへと追いかけます。

出現するタイミングは主に秋から冬にかけての夜、特に聖人の日、クリスマス、大晦日などの特定の夜に集中しています。
これらの日は、現世と来世の境界が最も薄くなる時期と考えられています。

出現する場所の特性としては、荒涼とした湿原(ムーア 英: moorland, moor)、古代の森、風の強い高地など、人間界と異界の境界が曖昧になる場所が挙げられます。
これらの場所は自然の力が強く、人間の支配が及ばない領域として、神話的な意味を持ち続けています。

 

死の予兆としての遠吠え

クン・アンヌンの遠吠えは、聞いた者の死を予言するとされています。
カダイル・イドリス山周辺では特に、この遠吠えの目撃談が多く報告されています。
前述の通り、遠吠えは距離が逆転する不思議な性質を持ち、遠ざかるほど大きく聞こえ、獲物に近づくにつれて次第に小さくなるといわれています。

この逆転現象は、異界の猟犬が物理的な距離ではなく、霊的・運命的な距離によって獲物を追跡していることを示唆しているのかもしれません。
彼らが狩るのは肉体ではなく魂であり、その接近は物理法則に従わないのです。

 

クン・アンヌンと類似する存在

クン・アンヌンはケルト文化圏における異界の猟犬の一形態ですが、他の地域にも類似する存在が伝えられています。

クー・シー(Cù Sìth / Coin-Sìth): スコットランドとアイルランドのゲール系伝承に登場する妖精の猟犬。
緑または黒の巨大な犬で、死や異界への連行を示唆する存在です。
クン・アンヌンと同様、ゲール系ワイルドハントにおける猟犬の役割を担います。

ダ・デルガの猟犬: アイルランド神話のアルスター・サイクルに属する物語『ダ・デルガの宿屋の破壊(Togail Bruidne Dá Derga)』に登場する9匹の白い猟犬。
クン・アンヌンと酷似しており、相互の影響関係が指摘されています。

ブラック・ドッグ: イングランドに伝わる黒い大型犬の幽霊。
地域によってはガブリエル・ハウンドと呼ばれます。

死霊猟犬: ドイツ圏のワイルドハントに随伴する猟犬。

 

現代における目撃例

クン・アンヌンやワイルドハントの伝承は、単なる古代の神話ではありません。
現代でもこれらの現象は目撃され続けており、特に第二次世界大戦中には、戦死したイギリス兵を来世へ連れて行く幽霊の軍勢が報告されました。

これは北欧神話のワルキューレ(Valkyrie / 独: Walküre / 古北欧語: valkyrja, 戦場で勇敢に死んだ英雄を選び出し、オーディンの治める死者の館ヴァルハラ / Valhalla / 独: Walhalla へ導く半神の女性たち)と同様の役割を果たすものと解釈されています。

ウェールズの山間部では、今でも嵐の夜に不気味な遠吠えや空を駆ける影を目撃したという報告が絶えません。
科学的な説明としては、風の音や野生動物の鳴き声、気象現象などが挙げられますが、地域住民の多くは今でもこれらをクン・アンヌンの仕業と信じています。

 

もしワイルドハントに遭遇したら?

伝承によれば、ワイルドハントやクン・アンヌンから逃れる方法は地域によって様々です。
しかし、共通する安全策がいくつか伝えられています。

  • パンを投げる: 供物として食べ物を投げることで、彼らの注意をそらすことができるとされます。
  • 道の真ん中に留まる: 道の中央にいることで、どちらの世界にも属さない中立の立場を保つという考え方です。
  • 直接見ない: 群れを直接見ないことで、彼らの世界に引き込まれるのを防ぐとされます。
  • 狩りに加わる: 逆説的ですが、場合によっては狩りに加わって彼らの活動を手伝うのが最善とされることもあります。

ただし、これらの安全策は指導者が誰であるか、どの地域にいるかによって異なり、地域内でも変化するため、確実な方法はないとされています。
最も重要なのは、彼らの存在を尊重し、畏敬の念を持って接することかもしれません。

 

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おわりに:境界を守る猟犬たち

クン・アンヌンとワイルドハントの伝承は、人間界と異界の境界を守る存在についての深い洞察を提供してくれます。
白い体に赤い耳を持つ神秘的な猟犬たちは、ウェールズの山々、古代の森、霊的な場所、そして夜空を駆け巡り、生と死の境界を行き来します。

彼らの出現場所──カダイル・イドリス山、バルウィン山脈、プリンリモン、フィノネの滝、十字路や古墳──は、いずれも現世と来世が交差する特別な空間です。
そして現代においても、これらの場所では不思議な現象が報告され続けています。

科学が発達した現代においても、ワイルドハントの伝承が生き続けているのは、人間が持つ「見えない世界」への畏怖と好奇心の表れなのかもしれません。
嵐の夜、ウェールズの山々を訪れる機会があれば、耳を澄ませてみてください。
もしかすると、遠く──いや、すぐそばで──クン・アンヌンの遠吠えが聞こえるかもしれません。

 

参考文献・さらに学ぶために

───

※ティンダロスの猟犬との混同にご注意
クトゥルフ神話のティンダロスの猟犬は、時間旅行者を追跡する別の存在です。
ワイルドハントとは起源も性質も異なりますのでご注意ください。

 

azuki
azuki

幽霊は怖いのですが、

神話として見ると幽玄です。

 

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