花まつりの詩と物語——「星と花の婚礼」より

花まつりの詩と物語——「星と花の婚礼」より Poetic Prose
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花の命を降る星に見た日

この物語は、ひとつの問いから生まれた。

散ることを知っていながら、なぜ桜はあれほど美しく咲くのか。

答えを探すうちに、ふたりの存在が現れた。
星の精アステルと、花の精リリアーナ。
出会うはずのなかったふたりが、春という短い季節の中で結ばれ、そしてまた、季節の理によって引き離されていく。
「星と花の婚礼」は、その往還の物語である。

第六章「花まつり」は、シリーズの中でも特別な位置を占める。
四月八日、お釈迦様の誕生を祝うこの日に、甘茶を注ぐ行為は「清らかな祝福を、生まれ来るものへ捧げる」という意味を持つ。
アステルとリリアーナの別れもまた、終わりではなく、次の生のための準備として描いた。

霧、桜吹雪、湿った空気——春の儚さを包む気象のすべてが、この章の舞台装置である。
そしてシマエナガの「ユキ」は、ふたりの間を往き来する小さな使者として、始めからそこにいた。

この物語を手に取ったあなたも、きっとどこかで「散ること」と向き合ったことがあるだろう。
そのとき、この花びらが少しでも、手のひらに温かく落ちてくれれば、それで十分である。

春霞の中、筆を置いて

花まつりの朝、霧の中で  — 詩 —

桜の香りが風に溶ける
花びらも共に、天へ返る

アステルよ、星の子よ
おまえの光が散る前に
リリアーナの花びらを見よ
散りゆく美しさは、終わりではない

ユキは白く舞い
霞の向こうへ道を示す
さよならは、また会う約束

 

詩「花吹雪」

花まつりの朝、霧が立ち込める。
誕生を祝う声が
桜の枝の間を抜けていく。

アステルよ、星の子よ、
おまえの光が散る前に——
もう一度だけ、リリアーナの名を呼べ。

花びらは地に落ちても
地上でなお、輝いている。
散ることは、消えることではない。
散ることは、空中の花になることだ。

ユキが枝から枝へ舞う。
白い羽が霧を裂いて、
春の空へ——さよならの道を示す。

 

散文「花まつりの別れ」

霧が深かった。

花まつりの朝、アステルは桜の木の下に立っていた。
空気は湿っていて、息をするたびに花の香りが胸に満ちた。
今日という日は何かの終わりではなく、何かの始まりの形をしていた。

「アステル」

リリアーナが呼んだ。
声ではなく、花びらの揺れ方で分かった。
彼女は今、枝の先にいる。
満開の桜の中心に、ちょうど霞に半ば溶けるようにして——目には見えても、手には届かない場所に。

「今日が最後ではないよ」と彼女は言った。
「散った花びらが地面を覆うとき、土は豊かになる。
わたしはそこにいる。
おまえが歩く道の下に。」

アステルは何も言えなかった。
言葉は全部、花びらになって宙を漂っていた。

そのとき、枝の上でシマエナガの「ユキ」が鳴いた。
ピーィ、と澄んだひとつの音。
二羽は並んで座っていた——肩を寄せ合って、霧の中でも白く、小さく、確かに、そこにいた。

ユキが羽ばたく。

桜吹雪が一斉に舞い上がる。

空は花になった。
地面も花になった。
アステルの手のひらに一枚の花びらが降り、すぐに風に連れていかれた。

それは別れだった。
けれど、こんなにも美しい別れは、きっとまた会う約束の形をしている。

桜の花びらが、もう一度、風に乗ってきた。

「星と花の婚礼」——花まつりの章、了

 

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あとがき

花びらが土になる頃に

書き終えてから、しばらく窓の外を見ていた。

桜はもう散っていた。
地面に積もった花びらは、雨に濡れて茶色くなりかけていた。
けれどそれを見て、悲しいとは思わなかった。
土に還る途中の花びらは、次の春の養分になる——リリアーナが言ったように、確かにそこにいる。

「花まつり」の章を書くにあたって、甘茶という習慣を改めて調べた。
誕生仏に甘茶を注ぐのは、お釈迦様の誕生時に天から甘い雨が降り注いだという故事に由来する。
清らかで甘い水が、新しい命の頭上に降る——その光景がそのまま、桜吹雪と重なった。
散るものが、祝福になる。
そのことに気がついたとき、この章の核心が見えた。

シマエナガの「ユキ」については、画像の中の小さな白い鳥に、ずっと助けてもらっていた。
霧の中でも迷わず枝に止まる姿、丸くて確かな体。
「儚さ」ばかりを書いていると、物語は軽くなりすぎる。
ユキがいることで、この章に重さと温かさが生まれた。

アステルとリリアーナの物語は、まだ続く。

次の章では、花の散った後の静けさの中で、ふたりがどのように「不在の中で存在する」かを描く予定である。
星は昼間も空にある。
花は散った後も土の中にある。
見えないことと、いないことは、別のことだ。

読んでくださった方へ。

あなたが今、何かを見送っている最中であっても、あるいは何かを待っている途中であっても——この花びらが、少しだけ共にあれますように。

– 花の散りきった翌朝に ユキの声を聞きながら –

 

azuki
azuki

新しい季節。

友達との思い出とともに、

シマエナガのユキは、今日も元気です。

 

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